日々の社会科:境界知能に気付いてください

日々の社会科

なんで分からないの? 
なんでできないの?

サボっているわけではない、
まじめに取り組んでいるのに、
どうしても勉強についていけない、
仕事でミスばかり。

友達の話にうまく合わせられない、
上司の説明が分からない。

子どもの頃から
できない自分が辛くて
怒る親や先生や
嗤う友達や同僚に
どうしたらいいかわからなくて
ヘラヘラ笑うしかなかった。
イライラして手を出して 
しまうしかなかった。

どうしてそうなのか、
鬱になってしまい、
ようやく医師がその理由を 
教えてくれた。

「境界知能」の人だったのだ。

いわゆるIQ、知能指数は
平均が85から117、
それでも世の中で
うまくやっていくには
100に達している方がいい。

70未満だと、「知的障害」とされ、
2%の人がそれにあたる。
知的障害と認定されれば、
日常に困難があるだろう、と
適した教育を受けたり
障害者枠で就業したり、

大変だけれども、
社会的な受け皿は用意されている。

境界知能、とは
平均に届かないが、
知的には問題がないとされる
IQ70以上85未満の
ゾーンに入る人々。

ついていくのが大変、ということ。

統計上14%にあたり、
7人に1人が該当すると
される。

社会的なサポートをするには、
人数が多すぎるのだ。

35人クラスなら、
5人はいる計算になる。

クラスの下位数人は、
実は境界知能だったのかも
しれない。

ひたすらドリルをやっても
ちっともいい点数が取れず
図形や割り算もさっぱり分からない
ようだったのは、
そもそも認知機能が、
学校で要求されるレベルに
達していなかったから。

認知機能とは、
見る、聞く、想像する。
厳密には
記憶・言語理解・注意・知覚・推論&判断の
5点となる。

これらの中に弱点があると
情報が取り込めず、
学習のつまづきにつながる。

多くの精神科医が
境界知能について発信している。

なぜなら、
境界知能は2次障害を
引き起こしやすいからだ。

学習、仕事、人間関係に
問題を抱えやすい彼らは
鬱になったり
ストレスを強く感じたり
精神的な不調をきたすことが
少なくない。

そこで、心療内科を
受診したりして発覚する。

発達障害との合併も
多々あり、
そのほうが発見されて
ケアを受けやすいという事実もある。

まずは、気付くこと。

どうすればいいのか、という
解決に関しては
境界知能そのものを
改善する手段は難しい。

それよりも、環境を整えること。
彼らが生きやすいように
仕事や学習に困難を抱えないように
考えてあげること。

自分の感情コントロールが
難しい面もあり、
単に彼らを困ったひと、と
捉えてしまうことも多い。

犯罪に手を染める人々の中に
境界知能者が少なくないことも 
指摘されている。

彼らが生きやすくなれば、
犯罪も減って 
仕事にも就けるようになり、
税収も増えて
社会も豊かになるだろう。

もちろん、IQとは
その人の能力の一部を表す 
指標の一つに過ぎず、
境界知能であっても、
自分の能力を活かして
活躍している人、
困難を抱えていない人も
多いだろう。

ただ、困難を抱えていて、
原因がわからず
途方に暮れている人がいたら、 
せめて知ることができると
良いのでは。

「ケーキの切れない非行少年たち」で
知られる宮口教授(立命館大学)は、
彼らが弱い認知機能を
強化するトレーニング教材、
「コグトレ」を出版している。

これは、いきなり算数や英語を
教え込もうとするものではなく、

「覚える」「数える」「写す」
「見つける」「想像する」という
学習の土台をつくるもの。

すぐに成績やIQが
上がるわけではないが、
ここを整えていけば
認知機能を上げていくことはできる。

そして、見た目にはわからない
困難を抱えている人々が
相当数いるということ、
理解して受け入れたら
社会もさらに変わっていけるだろう。

もしくは、
自分の中の困難が、
認知機能のどれかの弱さから
来ているのかもしれない、

そんな気付きを得られることも
あるだろう。

誰しも完璧な五角形の認知を
持っているわけではない。

お互いの凸凹を許容することに
繋がれば、
誰もがもっとラクになれるかも。

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