日々の社会科:東洋陶器にありがとう、ウォシュレット開発

日々の社会科

トイレには神様がいる、
というのなら、
日本のトイレにはどれほどの
神がいるというのだろう。

だって、こんなにも
どこに行っても
綺麗で快適なトイレを
持つ国なんて、
ないだろうから。

それは、
技術の粋を尽くして
極めて快適な便座を
作ってくれた人々のおかげ。

1876年(明治9年)、
武具を作っていた
森村家は、貿易商社として
森村組をスタートさせた。

1904年には
現在のノリタケが設立され、
陶磁器を作れるようになってから、

1917年に衛生陶器部門であった
東洋陶器が独立、
のちのTOTOとなる。

硝子部門は日本硝子、
のちの日本ガイシ、

大倉陶園や
伊奈製陶、日東石膏も
森村グループに入る。

ちなみに、伊奈製陶はINAX、
現在のLIXILなので、
TOTOとINAXは元々
同じ企業グループに
属していたのである。

TOTOは1914年、
大正時代にすでに
洋式水洗トイレを
作っていたのだが、
需要は極めて少なかった。

トイレはまたがる和式でよく、
下水道の整備もすすんで
いなかったためだ。

また、長らく
し尿を肥料としていたことも
影響していただろう。

洋式トイレが普及し始めたのは
1960年代の
高度経済成長期からで、
1970年の万博のころには 
絶好調。

TOTOの売上も
右肩上がりだった。

しかし、1970年代に
オイルショックが起こり、
住宅需要も落ち、
あっという間に
売上は下がっていく。

新しい商品を、開発しなくては。

白羽の矢がたったのは、
便座だった。

お尻を洗う便座を作ったのは
アメリカの企業が最初である。

輸入販売していたが、
部品もないし
使い勝手もわるいし、
もっと良いものを自分たちで
作ろう、ということに
なった。

トイレは紙で拭くもの、
洗う便座なんて需要はない。

社内の声はそれが大多数だったが、

「父は痔で苦しんでいます。
日本人の3割は痔だという統計もあります。
需要は、あります。」

と声を上げる社員もいて、
開発が決定した。

さて、どこから手を付ければいい。

尻を洗う、って
そもそもどこに尻が来るんだ。

データを取る必要があったが、
誰もやりたがらない。

開発チームのメンバーは
1日16時間便座に座って
尻を洗い、

家族にもう頼み込んで
データを取っていった。

その姿勢を見て社内にも
協力者が増え、
300人分のデータを
取ることができた。

湯の温度は、
ノズルの場所は、角度は。
水量は、水圧はどうする。
洗えなければ意味ないし、
かといって万一
排泄物がついてしまっては
いけない。

分析の結果、
湯の温度は38℃、
水量は500cc、
ノズルの角度は43度と
割り出された。

さらにどう尻に当てるのか、
水圧による振動は、
温度を常に一定にするのか、
課題は山積みだった。

ノズルは、車のラジオのアンテナを見て
伸縮式にすることを
思いつく。

水圧による振動は
ゴムをつけることで
解決。

湯の温度を調節するには
ICを使う必要がある。
しかし、濡れてしまう…。

あるとき、開発者は
雨の日に歩いていて気付いた。

信号機には、濡れても大丈夫な
ICが使われているのでは?

と、信号機メーカーの
協力を得て解決。

1年半という驚異的な早さで
売り出されるが、
電熱線の不具合が起きたりして
売上はなかなか伸びなかった。

なんとかしなくては。

チームはコピーライターの神、と
呼ばれる仲畑氏に頼み込み、

広告を作ってもらうことに
成功する。

そして、戸川純の
「おしりだって、洗ってほしい」の
テレビCMが大ヒット。

快適さのみならず、
節水という面でも
驚異的な効果を上げ、
かつて一度流すのに13㍑使っていたが
現在では4㍑を下回っている。

ウォシュレットの前に、
TOTOは便器の洗浄、
節水を行うために
開発に力を入れていた。

実験のために、
6階建てのビルを建てたのである。

排水管から下水道にいたるまで
水と代用汚物を見えるようにして
流す実験を
繰り返してデータを取った。

少ない水で綺麗にできる機能を
つけることに成功した。

便蓋や便器の開閉、
ノズル位置や水勢、水温も
調整できるようになった。

掃除も劇的にやりやすい形に
改良された。

2022年はとうとう
累計6000万台突破、
世界でも18カ国にまで
使われるようになる。

洗浄付き便座は、
まさに日本でガラパゴス化したもの。

ただ、このガラパゴスは
一度味わったら、
離れられない。

世界に広まりつつある。

世界で安全で衛生的なトイレを
使えないのは、
24億人にものぼるという。

排泄という行為は
食事とともに、
命に関わる大切なもの。

まさに、これからが
日本のトイレの勝負どころかも、
しれない。

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