日々の社会科:ラ・フランスの苦節100年と名前の秘密

日々の社会科

食欲の秋とはよくいったもので、
収穫の秋、
秋津島ニッポン、
秋は美味しいものだらけ。

果物も数あれど、
女王と呼ぶにふさわしい、
山形の洋梨は
ラ・フランス」

あの芳香、とろける食感、
熟すまでじらされるところなども
心憎い。

しかし、ラ・フランスは
その美味しさが認められるまで
実に100年間に渡り、
黒子として
ひっそりと存在してきたのです。

ラ・フランスは19世紀半ばに
フランスを代表する品種と
してその名がつけられました。

日本には、明治8年に山形で
栽培され始めたのですが、
実るのは変な形のもので、
しかも石のように固いしまずいし、
なんなんだこれは。

と、捨て置かれます。

明治42 年に皇太子御幸の際、
和梨を献上したところ
大変喜ばれ、
金一封とバートレットの
苗を賜りました。

バートレットとは、
イギリス生まれの洋梨のこと。

皇太子様から頂いた洋梨を
育てよう!と盛り上がり、
バートレットは、
缶詰用として
広く栽培されるようになりました。 

バートレットのおかげで、
ラ・フランスにもお仕事が。

単一品種のみでは実がなりにくい、
ということで、
ラ・フランスはバートレットと
相性が良かったため、
受粉の役割を持ちました。

バートレット20本に対して、
ラ・フランスは1本。

受粉にしか役に立たない樹。

ラ・フランスはバートレットの陰で
100年以上細々と
生き永らえてきました。

ただ、生産者の方々は
気付いていました。

ラ・フランスの実は、 
樹になっているときはまずいが、 
落ちてからほっておくと
熟して、非常に美味しいということに。

ただ、なんか見た目がイマイチだよな。

ということで、ついた名前が
みだぐなす
(みっともない梨、らしい)

昭和40年頃から徐々に
缶詰めから生のフルーツに
需要が移ります。
そこで、初めてラ・フランスの
美味しさが注目されます。

追熟技術も進歩して、 
濃厚でとろける美味しさも
届けられるように
なりました。

病害虫に弱く、手間もかかり、
生産管理が難しく、
本国フランスでも
絶滅か、といわれた
ラ・フランスですが、
官民あげての努力で
生産量も増やしつつありましたが…。

売れない。

こんなに美味しいのに
売れない「みだぐなす」。

ある日、気がついた人がいました。

「名前が、悪いんじゃないか?」

そして本来の名前
「ラ・フランス」として
売り出したところ、

麗しい名前とそれにふさわしい
美味しさが知れ渡り、
たちまち大人気に。

本国でも絶滅したといわれ、
1991年には
天童市からフランスに  
苗木1000本を贈っています。

生産者の方のおすすめの食べ方は、
皮ごと半分に切って
スプーンで芯をくり抜いて
果肉を食べてね、だそうです。

100年の下積みを経て、
女王の称号を得た
みだぐなす、いえ、
本国を超えたラ・フランスの
美味しさを、
今年も楽しませていただきましょう。

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