描くひと、奏でるひと、綴るひと、語るひと、映すひと、創るひと、そんな表現する人々にとって、「これはあの人のものだ」とすぐにわかってもらえるスタイルを築き上げるのは、理想であり、憧れであるでしょう。
現代においてそれを成し遂げた画家、ボテロの作品を展示した「ボテロ展ふくよかな魔法」が渋谷のbunnkamuraザ・ミュージアムで開催されています。
早速行ってまいりましたので、感想を述べたいと思います。
「南米のピカソ」「存命の画家の中で世界で最も高名」といわれているボテロですが、彼についての予備知識はなくても、いやむしろないほうが自分の感性で楽しめる展覧会だと感じました。
訪れる機会がある方にはお勧めしたいですし、行くのが難しい方には少しでもこの内容が参考になれば幸いです。
ボテロって誰?
フェルナンド・ボテロ。
1932年生まれ、90歳の現役の画家・彫刻家で、コロンビア人です。
幼くして父を失い、闘牛学校にも通いますが、自分は画家になる、と強い決意をもっていました。
コロンビアで高い評価を得てコンクールの賞金で学びに出ます。
ある時、マンドリンを描いていて、穴を小さくしてみたら…。とたんにそれは爆発したように感じられ、そこから彼独特のスタイルが出来上がったのです。
彼の名が一躍有名になったのは1963年、ニューヨークのメトロポリタン美術館で「モナ・リザ」が展示されたときに同じニューヨークの近代美術館(MoMa)のエントランスホールに、彼の「12歳のモナ・リザ」が展示されたことからです。
コロンビア人であること、画風が特異であることなどから様々な差別や批判を受けますが、自分の画風を貫いて、彼にしか創りえない世界を創造し続けています。
日本では26年ぶり!これは見逃せないね♫
ボテロ展はどこでいつまでやっている?
東京都渋谷区のBunkamura ザ・ミュージアムにて2022年4月29日から7月3日まで。
期間中の土日祝日はオンラインによる日時予約が必要です。
入館料(消費税込み) | 当日 | 前売り券 |
一般 | 1800円 | 1600円 |
大学生・高校生 | 1100円 | 900円 |
中学生・小学生 | 800円 | 600円 |
東京の後は 名古屋市美術館にて2022年7月16日~9月25日まで、
京都、京セラ美術館2022年10月8日~12月11日まで巡回予定です。
また、オフィシャルサポーターを、大人気のBE:FIRSTが務めているのも話題ですね。
巡回してくれるのね,楽しみー。
ボテロ展の内容は?
初期作品から始まって、彼の作品の内容別に分かれています。
大きな絵が多く、圧巻です。
初期作品&静物
どこかピカソ風でもある「泣く女」や「風に乗る少女」など、若々しいイメージの初期作品が4点。
そして、次のエリアが、これも彼にしか描けないのではないでしょうか。
特徴のある静物画の数々。
これまで静物画というのは、たとえば机の上にある何点かの果物、のようにいくつものアイテムが、それほど大きくないキャンバスに描かれているものばかりでした。
静物画の中で、彼の作風を作り上げたのはある時“マンドリンの穴を小さく描いてみた”ことから。
そこから、かれの“芸術は爆発した”のです。
楽器や果物、花、彼の手にかかると、どれも静物ではなく、生物の輝きを持ってくるのでした。
大きな虫食いの洋梨がひとつだけ、241X196もの大きさいっぱいに描かれている。
そして、ひときわ目を引くのが3点組になった「黄色の花」「青の花」「赤の花」です。
どれもシンプルなようで、数千もの花が多彩な色遣いで描き分けられている。
どれか1枚でも、そして3枚一緒でも、絵の中に取り込まれたかのような不思議な感覚にとらわれるのです。
本物の色合いはさらに素晴らしい。
信仰の世界&ラテンアメリカの世界
コロンビア人であることは、彼のアイデンティティの根幹をなすものです。
ラテンアメリカはスペイン支配下におかれたため、カトリック教国が多いのです。
ラテンアメリカの文化、そしてキリスト教に関連するものが多いのがこのコーナーです。
大統領を描いた何点かは、泣いている聖母は、対象に対するリスペクトであるのか、それとも風刺なのか。
ピクニックや楽士、踊る人たちなど、テーマは楽しげであるけれど、なぜか考えされられるような、そんな絵の数々が並びます。
「結婚したて」は、タキシードを着た新郎に、ベールを被ってブーケを持ち、なぜか全裸の新婦。
1987年から2016年までの作品群です。
ドローイング/水彩&サーカス
油絵ではなく、ドローイングと水彩のコーナーでは、水彩画ではこんなにも柔らかく優しい味わいになるのか、という作品がずらり。
家に飾るのなら水彩画がいいなあ、などと思わせます。
そして、サーカスをテーマにした作品は、登場人物たちがふくよかなもので、大丈夫かな?などと感じさせてしまうようなユニークな仕上がりになっています。
大きな象が調教師のいいなりになる「象」は、作者の意図はなんだろう、と考えさせられます。
サーカス団の日常を描いたものもあり、ボテロが彼らに向けていた優しい視線を感じることもできます。
うん、水彩画コーナーが好きです。
変容する名画
最後のコーナーは途中から撮影が許可されています。
かつての高名な画家たちの作品をモチーフにして、彼独自の作品に仕上げています。
ベラスケスやラファエロの美女、美少女たちがボテロスタイルに描きなおされるのは、なんだかおもしろい。
スリムで艶やかな美女もいいけれど、ふくよかだっていいじゃないか、自分らしくあればいいんだ、なんだか勝手にそんなメッセージを受け取りたくなるような絵が並んでおりました。
世界初公開のモナリザの横顔も写真撮れたね。
ボテロ展ふくよかな魔法の感想まとめ
26年ぶりにやってきた南米のピカソ、存命のもっとも有名な画家、ボテロ展は、大きなキャンバスにのびのびと描かれた彼独特の表現がたっぷり楽しめるものです。
大きな画面でありながら圧迫感もなく「みんなそれでいいんだよ」と伝えてくれているような、温かみを感じさせる愉しい展覧でした。
多くの人がこのボテロを実際に感じてくださると嬉しいです。
- ボテロ展ふくよかな魔法は7月3日まで東京渋谷のbunnkamuraザ・ミュージアムにて開催中、このあとは名古屋(7/16~9/25)・京都(10/8~12/11)と巡回予定。
- 会期中の土日祝日はオンラインで日時予約が必要。
- 大きなキャンバスに描かれたものが多く、見やすい展示です。
- 全部で70点、出口近くの数点は撮影できます。
- オフィシャルサポーターはBE:FIRST、音声ガイドは伊東健人さん。
楽しかったね。また行きたいな!
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